現在の人工知能研究を始めとする情報処理研究において,シミュレーションは必要不可欠な手法であるものの,シミュレーション技法そのものに対する関心は高いとは言えない.「シミュレーションを実行したらそれなりの結果が出ただけ」と揶揄される研究も少なくはなく,シミュレーションという手法に対する捉え方を見直す必要があると考える.また,人工知能研究における主要な研究分野であるデータマイニングにおいては,新しいマイニング手法の提案なのか,それとも新しいデータ領域などへのデータマイニング応用に関する取り組みなのかが混在している状況となっており,特に後者においてはシミュレーションは必要不可欠な道具であることから,シミュレーションに対する取り組み方の曖昧性と,データマイニング研究の位置付けに対する曖昧性が組み合わさり,このことが研究の位置づけをさらに難解なものとしている.
一方,脳や社会システム・インターネット・WWWなどの多様性のある大規模複雑システムを理解するためには,これまでの,データという鉱脈からの知識を掘り出す作業では不十分であり,既にある鉱脈を起点とし,新しい鉱脈を創りながら掘り出す,あるいは掘り出しながら創る「構成論型の新しいマイニングプロセス」が必要であると考える.そこで,「シミュレーション」と「データマイニング応用」という,現在において,また今後さらに注目されることが確実に予想されるキーワードをターゲットとして,データマイニングを中心とする人工知能研究を始めとする情報処理関連分野における望ましいシミュレーションのあり方を研究コミュニティとして共有し,日本からの当該領域に関する高レベルな論文が輩出される状況の確立を目指す.
キーワード
- マルチエージェント
- 実問題応用
- 創発システム
- 進化システム
- 知識発見
- 機械学習
- Web情報処理
- 経済シミュレーション
- 実世界シミュレーション
- 複雑ネットワーク
- 社会システム
- クラウドコンピューティング
- モデル化に関する基礎理論
- 知識の構造化と体系化
- 暗黙知への接近とその形式知化