出張報告:SMASH25 Summer Symposium(M1・山本&天満)
はじめに
M1の山本と天満です.
北海道の札幌市教育文化会館にて,2025年7月の7,8日(月・火)の2日間にわたって開催された,SMASH25 Summer Symposiumにて,私たちのこれまでの研究内容について発表を行いました.その様子について報告します.
SMASHについて
SMASHは電子情報通信学会や情報処理学会などの共催で開かれるシンポジウムであり,マルチエージェントに関連した研究を広く共有する場です.私たちは今回,飛行機に乗って札幌へ赴き,第11回となるサマーシンポジウムに参加してきました.
発表内容
天満は「MASに基づく群衆動向を評価器とした都市のアメニティ設計最適化パイプラインの実現」,山本は「参加型MASのためのLLMを活用したエージェント生成ツール」というタイトルで発表を行いました.
天満は,都市で暮らす人々の動態をエージェントベースのシミュレーションで模倣することで,都市構造,特にアメニティ配置の最適化に資する評価手法と設計プロセスを提案しました.
山本は,参加型MASを実施するためのエージェント生成のコストを削減し、オンサイトで生成とエージェント属性を行えるようなツールの開発について、現段階での進捗を発表しました.
得られた知見
山本:質疑応答にて,自分の発表を誤解された上での質問が複数あった.自分の研究を発表内でしっかり伝えられていなかったという点は,今回の発表の改善点.
他の研究者の発表を聞いていると,自分と比べて,多くの論文を読み込んでいる印象があった.自分の研究でも,背景をしっかりと認識できるよう,先行研究の調査は徹底したい.
「深層学習を用いた風景の雰囲気に対応するフォント出力システム」という画像認識系の発表にて,いくつかの画像認識モデルが挙げられており,今後の研究の参考になりそうだった.
天満:セコム株式会社の鶴島彰氏による「人間の認知過程が分散動的避難誘導システムに与える影響」に関する研究発表が,今回聴講した中でも特に印象深いと感じたのでこの場で紹介する.避難経路を動的に指示する分散型誘導システムにおいて,機器の一部が故障してもシステム全体として高い誘導性能を維持するための方策として,「断続誘導」と「永続誘導」が比較されており,永続誘導(故障前の方向を維持表示する方式)が,特に中枢的な装置がランダムに故障するシナリオ下でも有効であることが示されていた.また,単純な避難エージェントではなく,同調行動や信頼喪失といった認知特性を取り入れた人間らしいエージェントを用いることで,より現実的な検証が行われていた.さらに,VRを用いた避難実験によって行動モデルの妥当性を裏付けていた点も非常に説得力があり,発表としての完成度の高さを感じた.今後の自身の研究においても,このように実証とモデル構築を一貫して行うプロセスこそが,説得力ある発表につながるのだと実感し,大きな刺激を受けた.
感想とまとめ
山本:飛行機の揺れになれてなさすぎて,特に着陸時に緊張しました.北海道は初めての訪問でした.昼間は落ち着いた雰囲気を感じていたが,夜にすすきのを散策したときは,新宿のような活気があり,全く違う印象を受けた.2日目に食べた寿司のネタがすごくでっかくて美味しかったです.
天満:他の研究者による優れた取り組みを間近に見ることで,自分の研究の進め方や見せ方について新たな視点を得ることができた.今後は,自身のテーマである参加型シミュレーションのための都市構造の最適化においても,説得力ある評価・検証プロセスをより意識的に取り入れ,研究の質を高めていきたいと感じた.