はじめに

2025年11月15日~18日にかけて、イギリスのロンドンにて開催された国際会議
The 24th IEEE/WIC International Conference on Web Intelligence and Intelligent Agent Technology
(以下、WI-IAT2025)に参加し、
「LLM-powered Information Support for Urban Design based on Participatory Multi-Agent Simulation」
というタイトルで研究発表を行いました。
本報告書では、学会で得られた知見や成果について報告します。


WI-IAT2025の概要

  • 開催日:2025年11月15日~18日
  • 開催場所:The Docklands Campus of the University of East London
  • 主催:IEEE/WIC

WI-IAT2025は「Web Intelligence(ウェブインテリジェンス)」および
「Intelligent Agent Technology(知能エージェント技術)」をテーマとして取り扱い、
世界中から学生や研究者など幅広い方が参加します。


発表内容

Short Paper Session – III にて、
「LLM-powered Information Support for Urban Design based on Participatory Multi-Agent Simulation」
というタイトルで発表を行いました。
本発表では、参加型マルチエージェントシミュレーション(PMAS)における
大規模言語モデル(LLM)を活用した情報支援の可能性について論じました。

都市設計における PMAS を用いた議論には、
都市設計やシミュレーションの専門家ではない参加者
(市民や学生など)が参加することが多くあります。
しかし、近年の AI 技術の発展や感染症流行の影響などにより都市環境が複雑化する中、
そのような参加者が PMAS によって生成される膨大かつ高度な情報を適切に解釈し、
議論に活かすことは容易ではありません。

そこで本研究では、PMAS から生成される膨大な情報の中から重要な要素を抽出し、
深い推論を伴って参加者の議論を支援する
「情報支援エージェント(ISA)」を開発しました。


興味深かった発表

「Consideration of Memory Forgetting Mechanisms for Realization of Human-like Dialogue Systems」

本研究は、対話システムとのやり取りにおいて、
提案された 2 種の手法を通じてシステムが
「人間らしく(Human-like)」振る舞うことを確認したものでした。
「人間らしさ」には多様な要素が考えられますが、
本研究では、とりわけ会話の経過とともに対話システムが
過去の発言内容を徐々に「忘れていく」振る舞いに着目していました。

そして、その「忘れていく」進行度合いを、
システムが演じる話者の興味レベルおよび経過時間の観点から評価実験を行った結果、
システムは人間の記憶特性に類似した挙動を示すことが報告されていました。

一方、私が開発している ISA は現在、
ユーザーに対して正確で多角的な視点や深い洞察を提供することを
主な目標としたフェーズにあります。
しかし、今後は実践的な導入を見据え、
ユーザーの意思決定へどのように介入・貢献できるかを探究する
研究段階へ移行していくことが想定されます。

その際、ISA の価値をより高める手法の一つとして、
ISA が「人間らしく」振る舞うことも有効なのではないかと考えました。


現地の様子

・ロンドン到着時市内の様子(午前6時)

・The Docklands Campus of the University of East Londonの様子。

・Banquetの食事。

・教授との食事の様子。


全体の感想とまとめ

ショート発表であったため、
限られた時間の中で要点を的確に伝えられるよう
スライド構成に苦心しました。
また、英語が母語ではないことから、
できるだけゆっくり話すことや、
正確な発音・アクセントに留意して発表を行いました。
質疑応答に備えて複数枚の補助スライドも用意しておりましたが、
質疑応答はありませんでした。

バンケットでは、アメリカからいらした教授や
日本から参加した学生の皆さまなど、
さまざまな背景をもつ参加者と交流を深めることができました。

総じて、今回が初めての海外発表ではありましたが、
事前準備を入念に行ったこともあり、
大きな問題なく発表を終えることができました。
本発表で得られた経験と学びを、
今後の海外発表に活かすとともに、
同期や後輩に共有し、
今後の活動の一助にしてもらいたいと考えています。